【解説付き】中国ソーシャルメディア業界図2016


8月10日,中国ソーシャルメディア市場を分析するKantarMedia CICが2016年中国ソーシャルメディアランドスケープ(業界図)を公開しました。例年通り、中国語レポートの日本語翻訳と併せて、中国ソーシャルメディア業界5年目の井餘田コメントを追加していきたいと思います。対中国のマーケティング担当者はもちろん、日本のIT企業でサービス開発担当者、訪日インバウンド界隈の方も是非ご一読いただければと思います。

※アプリ名は【中国語(英語/日本語)】で表記。

2015年版はコチラ↓↓↓
【解説付き】CIC発表:中国ソーシャルメディア業界構造2015


 

◆概要
◆各章の3行まとめ
◆中国語レポートの日本語翻訳
◆ 井餘田 コメント

中国ソーシャルメディア業界図2016

中国ソーシャルメディア業界図2016概要

1 BATSを中心とした中国デジタルソーシャル業界図
2 複雑な中国小売り市場で急速に発展するECプラットフォーム
3 引き続き多様な発展を続ける動画市場
4 Q&Aプラットフォームのルネサンスとユーザ参加
5 インフルエンサー界の新概念(網紅/ワンホン)

 

1 BATSを中心とした中国デジタルソーシャル業界

◆三行まとめ
①BATSが中国を牽引
②情報の信用低+情報過多→ソーシャルが重要
③ソーシャルから決済まで一気通貫

中国ソーシャルメディア業界図2016BATS
 

◆レポート日本語訳
百度(Baidu/バイドゥ),阿里巴巴(Alibaba/アリババ),腾讯(Tencent/テンセント),新浪(Sina/シナ)→これら4つを合わせてBATSと呼ぶ。
これらBATS傘下には8つのSNSおよびECブランドを有し、さらにそのそれぞれが数億規模のアクティブユーザーを有し、これらのプラットフォームが中国SNS業界における中心となっている。中国において、BATSのパワー(規模/資金力/獲得ユーザー)がインターネットの三要素(VIP)、バイラル性(viral)情報化(informatice)実用性(practical)のあるものにしている。中でも 情報化(informatice)と、 実用性(practical)の二点は特筆すべきである。

中国では情報の信用度が低く、情報が氾濫している状態であるため、関連するニュースやネットユーザーのコメントなど、他の経路での情報を見つけにくい。世界の他の市場と比較して、このような市場環境においてはSNS上のメディアが中国においての重要性は高まる。中国の SNS上のメディア の実用性(practical)は阿里巴巴(Alibaba/アリババ) 傘下の【支付宝(alipay/アリペイ) 】 、 腾讯(Tencent/テンセント)の【财付通(CaiFuTong/ツァイフトン) 】 といった成功事例からもわかるように、決済システムとの緻密な融合によって実用化されている。

現在、【微信(wechat) 】 は7億人のユーザーを有するが、これはいちSNSメディアプラットフォームとしてだけではなく、EC、P2Pでの口座振替、決済、および投資信託(mutual fund)の機能も有する。SNSと決済機能が継ぎ目のない形で連携され、完全な形でのSNS生態系を有する地域は中国を除いては今のところこの地球上には存在しない。

中国ソーシャルメディア業界図2016BATS2
◆井餘田コメント
「完全な形でのSNS生態系を有する地域は中国を除いては今のところこの地球上には存在しない。 」先日8月3日にCINNIC(中国互联网络信息中心)より公開された最新のレポートの中で、2016年6月に中国のネットユーザーが7.1億人を突破し、ネットの普及率が51.7%に到達したとのことで、この巨大市場を背景に進化を遂げています。

ここ1年ほどの変化として、2012~15年ごろまでは、中国のサービスは完全に中国国内在住の中国人向けに作られていたため、海外居住者、非中国人にとっては海外での電話番号認証や中国身分証を使った個人認証等にかなりハードルを感じていましたが、最近では海外居住者、外国人にも対応するようになり、中国サービスの海外進出の準備段階とも取れるような時代の変化を感じています。

今まで先進的な事例はアメリカのシリコンバレーから情報が入ってきていましたが、2012年頃から特にメッセージチャット等の領域を中心に、中国発の興味深い事例も増えています。日経がアジア欄を拡充したように、Tech/IT系の媒体も中国関連情報に力を入れているようです。O2O、モバイル決済、そして中国人のライフスタイルの変化に関してはIT界隈の人のみならず一度中国に行って体験しておくことをお勧めします。2012年以降の中国居住経験有無で中国IT事情に関する理解度が大きく異なり、また中国IT市場の理解度と日本社会への溶け込み度がトレードオフになる傾向があることからも、在日中国人の方でさえも帰国時はびっくりの浦島太郎状態ということも少なくありません。在日中国人の合言葉は「中国のIT業界の発展は早すぎる。」となっています。

↓中国での決済についての過去記事
中国人「石焼〜〜〜きいも〜」→wechat/アリペイ対応可

 

2 複雑な中国小売り市場で急速に発展するECプラットフォーム

◆三行まとめ
①EC未対応→ECの細分化
②越境EC/海淘(ハイタオ)がトレンド
③ソーシャルとECの融合

中国ソーシャルメディア業界図2016EC
◆レポート日本語訳
中国消費者の増加に伴い、様々な商品購入需要が増加している。
しかし今のところ、依然一部の商品はオフラインからオンラインのECプラットフォームに至るまでの販売を行っておらず、これによって、より細分化された消費者をターゲットとするECプラットフォームが出現し始めている。例:共同購入 【糯米 (NuoMi/ぬおみー)】 【 美团(MeiTuan/めいとぅあん) 】 、 フラッシュマーケティング特化EC【魅力惠(MeiLiHui/めいりーふい) 】 、中古品特化EC【闲鱼 (XianYu/しえんゆー)】 、クラウドファンディング【京东金融 (JingDongJinRong/京東金融)】 、チケット予約等のO2O【格瓦拉 (GeWaLa/ぐわら)】 、この他、海外製品の代理購入、越境EC【小红书 (XiaoHongShu/しゃおほんしゅー)】 (海淘:ハイタオ※海外製品の購入)、これらのECプラットフォームは中国市場に新しい商機をもたらした。
SNSプラットフォーム上での決済のトレンドの元、SNSとECの境界線が曖昧になり始めており、伝統的なECにおいても、ソーシャルとの融合を進め始めている。代表的な成功事例である 【小红书 (XiaoHongShu/しゃおほんしゅー)】 、の他、【淘宝 (Taobao/タオバオ)】 の“微淘”, 【 天猫(T-malll)】の“范儿”,【京东 (JingDong/京東)】 の“发现”、【一号店 (YiHaoDian/一号店)】 の“一品堂”等が事例として挙げられる。

◆ 井餘田 コメント
【小红书 (XiaoHongShu/しゃおほんしゅー)】についてはメディアとしても、コミュニティとしても、頭一つ抜け出した感がありますね。爆買いで盛り上がった中国向けマーケティング市場ですが、爆買いのメカニズムを紐解くと、影響力と情報力を持つ情報拡散のピラミッドの上流から下流にむけて、情報が流れる中でピラミッド上層の メディア 、KOLから代理購入者(ソーシャルバイヤー)海淘売り手、海淘買い手、越境ECを含むEC上での情報がその下層に位置するの情報リテラシーが低い一般購入者、一般旅行者にむけて情報が浸透していきました。”攻略買い”に代表される中国人の海外商品購入フローの中で、EC上のコメント等の情報の役割が大きな役割を果たしたといえるでしょう。昨年、2015年の中国ソーシャルメディア業界図の中でも、このEC上の評判について取り上げられていました。これに加えてECサイトのメディア化という動きは今後も進みますが、越境ECに関しては昨今の関税ルール変更と、2016年11月11日の独身の日の商品獲得問題で大手ECと越境系新興ECとメーカーとのかかわり方の点で大きな転換期を迎えることになるかと思います。

↓ECに関する過去記事
【完全版】2015年中国独身の日最新データまとめ

 

3 引き続き多様な発展を続ける動画市場

◆三行まとめ
①弾幕系はもはやデフォルト機能
②マイクロムービーはUGCの起点
③生放送×プロモーション事例

中国ソーシャルメディア業界図2016Q&A
◆レポート日本語訳
伝統的な動画視聴サイト【优酷(Youku/ようく)】【 爱奇艺(iQiYi/あいちーいー)】 等は、合法的に中国国内及び海外の動画コンテンツを閲覧できることにより、依然として動画プラットフォームの中心となっている。これらの既存のプラットフォームをもとに動画視聴サイトを三種類に分類した。①弾幕系②マイクロムービー③生放送。
弾幕の技術はネットユーザーのリアルタイムコメントを文字の形式で画面上に表示するものであり、初期においてはアニメやゲーム等の若年層向けのプラットフォーム上で流行した。【Acfun( Acfun/えーしーふぁん) 】 、【BiliBili (BiliBili/びりびり)】 、このふたつのプラットフォームが弾幕系プラットフォームにおける中心である。
最近では、マス向けの動画視聴サイトでも弾幕の機能を有し始めている。そのほか、マイクロムービー系に分類される【美拍(MeiPai/めいぱい)】 、【秒拍(MiaoPai/みゃおぱい) 】 は商品ブランドがネットユーザーが自発的に発するコンテンツのオリジナルソース(UGCの起点)となっている。生放送に分類される【熊猫TV (PandaTV/しょんまおてぃーびー)】 和“【战旗TV (ZhanQiTV/じゃんちーてぃーびー)】 (アメリカの【Periscope (ペリスコープ)】 の生放送アプリと同様のサービス)は、消費者の注目を集めただけでなく、政府関連の情報管理部門の注目も集めた。ブランドのマーケティングプロモーションにおいても、生放送プラットフォームが徐々に受け入れられ始めており、 美宝莲 (Maybelline/メイベリン) Angelababyとのモバイル生放送提携により口紅のプロモーションを実施し、2時間で販売数10000本を突破した。

◆ 井餘田 コメント
動画、生放送についてのコメント
動画に関しては、ソーシャルメディア上での動画は伝統型と言われる、优酷,土豆,爱奇艺と言うよりは、マイクロムービー/モバイル動画として始まり、長い尺の動画まで対応し始めた秒拍,美拍といったメディアとの相性が良く、特に微博の場合は秒拍との相性が良い。微博-秒拍,微信-腾讯视频-微视,百度-爱奇艺-拍客といった具合にBATSがそれぞれの生態系にサービスを保有しており、競合サービスが自社生態系の中で注目されないよう、feed表示へのペナルティ等の施策を行っているという背景もある。微信で淘宝のリンクがシェアできなかったり、微博で微信に誘導し辛いのと同じような考えですね。上有政策,下有对策(上に政策あれば、下に対策あり)なので、これらの変化に対して色々と小技は存在しますが、プラットフォーム選定、分散型メディアの注力メディア選定等について、動画=youtube,マイクロ動画=vineとそれぞれ一強の世界市場とは、ここでも生態系の点で大きな違いがあり、日本企業としては中国に特化した対応が必要になります。

生放送に関しては、百度指数(≒google keyword planner)で、各生放送プラットフォームの注目度合いの推移を見れば明白ですが、2000年代後半からのゲームを中心としたPC生放送、そして2015年末の花椒、2016年前半の映客,遅れてきた微博系の一直播と、現在100以上の生放送アプリがひしめく状態で、日本のアダルト系ライブチャットのように、事務所に大量の生放送室を構えタレントの卵を囲いった生放送事務所と、顔出し生放送へのハードルが日本と比べて低いと言われる中国人一般ユーザーにより日夜生放送が繰り広げられています。エロに関しては、露出の規制はもちろん、セクシーにバナナを食べる放送が全面的に禁止されたり、レポート中にもあるように新たなメディアとして注目の規制の対象となっています。

企業の生放送を使ったプロモーション事例では、上述のメイベリンの口紅プロモーションのほか、携帯電話の小米、コンドームのDUREX社等の事例があります(過去記事参照)。小米(シャオミー)、DUREXともに、ソーシャルヒアリング、ソーシャルマーケティングに強い企業として中国国内ではかなり有名で、小米(シャオミー)の口コミマーケティング社内ハンドブック「参与感」は、中国マーケティング必読書籍の筆頭です。中国企業はもちろん日本企業でも、美容系企業を中心に中国の生放送アプリと、KOLを組み合わせてのプロモーションの事例もすでに出来ており、日本関連のKOL、メディアの中でも2016年7月以降定期的な生放送を実施し、各生放送プラットフォーム上でのフォロワーを獲得する動きが強まっています。

↓生放送に関する過去記事
中国動画界の女王papi酱生放送するアル!

2015年中国動画アプリ市場ユーザーレポート

 

4 Q&Aプラットフォームの再興とユーザ参加

◆三行まとめ
①課金型Q&Aサービスの台頭
②Q&A×生放送
③KOLを活用したQ&A型プロモーション

◆レポート日本語訳
王思聪(中国NO1のお金持ち)がどれだけお金を持っているか気になったことはありませんか?
最近話題になっている【分答 (FenDa/ふぇんだー)】 【 知乎Live (ZhiHuLive/じーふーらいぶ)】といったQ&Aプラットフォームでは、これらの有名人に質問することが可能である。
分答は質問者の質問を促進する施策を実施し、ネットユーザーの平均課金額は数百~数千元となった。(1600~160000円)
王思聪はアプリ【分答】上での個人的な噂話に対する回答を通して45000ドル(460万円)を稼いだ。また 【知乎live 】は各業界、各領域の専門家が知識を共有するコミュニティであり、KOL(Key Opinion Leader)が個人的な生放送(プライベートライブチャット) の形式 で、ネットユーザと知識や意見をユーザと共有するものである。ブランドはいかにこれらのQ&A型プラットフォームを活用するかを考慮したうえで、KOLや各領域の専門家とより効果的なプロモーション戦略を計画する必要がある。

◆ 井餘田 コメント
課金型Q&Aでは、wechat決済/alipay決済といったモバイル決済に対するハードルが全くない点、回答者、質問者それぞれに対するモチベート手法が秀逸、質問者も1元盗み聞き機能で、質問者も稼げるという点が非常に面白い。情報取得に対する意欲が非常に高く、ユーザー層も高学歴の知識層が集まる知乎は広告性の強いハードアドに対する評価は非常に厳しく広告挿入の難易度は非常に高いですが、情報が氾濫している中国SNS上においては専門性が高く信用性の高い情報が集まっている点は特筆すべきです。プロダクトアウト発想が強い傾向がある訪日インバウンド界隈はマーケットインでメディアとしての視点からも日本関連の人気コンテンツをチェックするべきかと思います。ちなみに、私(@日本哥玩微博)も知乎の日本関連人気質問リスト等を取得して、人気のテーマを元にHow To Japanの動画コンテンツテーマ設定を行っています。

 

5 インフルエンサー界の新概念(網紅/ワンホン)

◆三行まとめ
①バズブロガー(網紅)の勃興
②KOL×EC ×ブランドプロモーション
③KOL活用の最適化が課題

◆レポート日本語訳
2016年”網紅” バズブロガー の概念が多くの業界領域に浸透し、 KOL(Key Opinion Leader) 界において中核的な力を発揮するほどとなった。現在、KOLは、有名人、専門家、バズブロガー、の三つに分類される。

専門家は学術的バックグラウンドと 膨大な専門知識を融資、美容領域、ファッショントレンド等の特定の領域において一定の権威を有し、同時に忠誠心の高いローヤルフォロワー/コアフォロワーを大量に有する。一方 ”網紅” バズブロガーにおいては、オンラインの口コミとオフラインのビジネスチャンスの転換に特化しており、自身のブランドイメージをもとに、ECの形式で商品販売をプロモーションするものである。呛口小辣椒というアカウントが代表的な成功事例である。 ”網紅” バズブロガーは日常の私生活を公開することに対して公開的であり、オンライン・オフラインでアクティブなセレブや有名人と比較して、 ”網紅” バズブロガーのイメージはよりリアルで、偽りがないとされており、一般人の生活に近いものである。KOL業界が複雑になればなるほど、ブランド側ではより適当な手法でKOLのメディアに対する影響を最適化する手段を見つける必要がある。

◆ 井餘田 コメント
KOL活用に関しては日本国内でも取り扱い代理店が増加しているが、現状2012年段階のSNS運用代行と同じ焼き畑農業モデルが多い印象。KOLの投稿による単発投稿のソーシャル上の投稿効果測定、ROI測定はもちろんだが、”KOLのメディアに対する影響”つまり、フォロワー数、アクション数以外のメディアに対する影響、つまりブランド力、認知の数値化、指標設定の段階でつまずいている企業が多いように思います。网红に関しては、网红1.0→2,0→3.0と移行してきたのと同様にメディア戦略も分散型に移行する傾向もありますが、とはいえ多様なプラットフォームを有する中国市場では分散っぷりも激しいです。動画プラットフォーム、マイクロ動画プラットフォーム、基幹形ソーシャル、細分化ソーシャル等、それぞれにいくつもの競合が存在し、分散先メディアの選定と効果測定も日本企業にとっては難しいところです。

 

まとめ

◆レポート日本語訳
中国SNS業界の独自性、多様性と劇的な変化。
上述の5つのトレンドが 中国のSNS業界を ”独特で”、”多様で”、”劇的な変化”を有するものにしており、これらの特徴が中国ソーシャルメディア業界図の根幹となる3つの変わらぬ要素となっている。西側欧米社会においては、もしかするとFacebook,Google二つのプラットフォームの技術から離れても良いかもしれない。しかし、中国においては、プラットフォームは唯一無二のものではなく、多種多様なものであり、この多様性によって一気通貫型の生態系を築いてきた。このような複雑な環境を理解し、計画し、実行する努力を継続することによって、最良の成果を上げることができる。

◆ 井餘田 コメント
世界のウェブマーケティングは二種類に分かれる。
中国マーケティングとその他だ。

以上アジアビジネスなう!
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筆者について

 


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